筋肉の働きが抑制される??
前十字靭帯再建術や人工膝関節置換術の術後、膝変形性関節症のリハビリ介入時に、
筋力低下に対してアプローチすることは非常に重要ですね。
特に内側広筋の筋力低下が問題になりますよね。
この要因は廃用性筋萎縮と神経生理的な反射性筋力低下が考えられます。
術後すぐにリハビリを開始しているのに、廃用性筋萎縮だけとは考えにくいですよね。
ここで重要な事は、患者さんは神経系の抑制性反射メカニズムによって、
筋出力が低下している可能性があるということを考えなければならないです。
今回はこのような状態についてまとめていきたいと思います。
AMIとは
StokesとYoun1)らは関節切開による半月板切除の術後経過において
大腿四頭筋の最大収縮を両側の筋電図から検討し
疼痛が消失しても関節損傷や炎症性関節では筋活動が抑制されるとし、
本現象を関節原性筋力低下、また関節原性筋力抑制と称しました。
この文献での、筋抑制期間については以下の通りです。
- 術後直後から強大な筋抑制が起こり、24時間では80%抑制
- 術後3日〜4日で50〜70%の抑制
- 術後10〜15日後、疼痛が消失したあとでも40%以上の抑制が続いていた
このような状態で神経系の抑制性反射メカニズムのことを
関節因性筋抑制(Arthrogenic muscle inhibition:以下AMIと略)と言います。
AMIのスイッチ?
上記の文献の紹介でのあったように、術後や怪我をしている事など、
AMIの発生にはスイッチが必要なようです。
では何が原因なのでしょうか?
Rice2)らは、人工的に膝関節の圧力を高めた研究を報告しています。
膝関節にブドウ糖生理食塩水を注入し、50mmHgの圧を作り出した。
その後、膝関節の大腿四頭筋のピークトルク、筋繊維伝導速度などは有意に低下したと報告しています。
この研究により人工的に作り出した腫れでも、筋肉には影響があったことから、
AMIを作り出すスイッチは腫れ(Swelling)が関係している事がわかりました。
機械的受容器(mechanoreceptor)
関節運動を行う時に、筋紡錘や腱紡錘をはじめとする各種の関節受容器からの
フィードバックで成立しています。
機械的受容器(mechanoreceptor)は、機械的刺激の深部受容器であるといわれ、
関節の空間的位置覚や関節の動きの変化、加速度に関する運動覚と関節包、靭帯の緊張具合を
感知するものと考えられています。
怪我や手術によって、関節内の圧力が高まることによって
関節周りに位置する機械的受容器(mechanoreceptor)が反応し、抑制シグナルを送り出す。
このシグナルによって筋出力低下が起きますが、
これって、自分をを守るためのもので
怪我をする→その部位の周りを抑制して、回復させようという保護機構ですね。
まとめ
今回はAMIについてまとめていきました。
「力を入れたくても、神経抑制によって力が入らない」
この状態について、復習することができました。
しかし、この脳と筋肉のコミュニケーションがうまくいってない状態では
使われなくなった筋肉は、筋萎縮を起こしてしまいます。
非常によく見られる状態なので、しっかり理解して対応していきたいですね。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。
参考文献
1)The Contribution of Reflex Inhibition to Arthrogenous Muscle Weakness