Physical Therapy

半月板損傷に対するリハビリ(切除術後) 半月板シリーズ⑥

こんにちわ Physio-Notesです。

前回は半月板損傷後の保存療法を選択した後の、リハビリについてまとめていきました。

保存療法では半月板自体には、外科的な治療が行われてない状況で、
リハビリを開始していく事になります。
損傷した半月板の状態やバイオメカニクスを考慮しながらのリハビリ・トレーニングを、
実施していくところが特徴的な部分でした。

今回は、半月板損傷後に切除術を選択した場合にリハビリについて
勉強していきたいと思います。

前回の記事は下記にリンクを添付してきますね。

半月板損傷に対するリハビリ(保存療法) 半月板シリーズ⑤半月板損傷後のリハビリは、縫合術、切除術、保存療法と治療法によって、リハビリの経過が違います。今回は、半月板損傷に対して、保存療法を選択した場合のリハビリについてまとめました。...

半月板損傷の切除術の適応について

半月板損傷後、変性が高度で縫合が困難な損傷や無血行野での損傷に対しては、未だ臨床的に有効な治療法として部分切除が適応になります。

半月板切除術は高率に変形性関節症へ移行する事は広く知られているが、それは術後のリハビリテーションの問題だけでなく、長期経過において生じるものだと考えられています。

半月板切除のリハビリについて

リハビリでは切除された場所を確認して、その部分の力学的なストレスを軽減させる事を目標としていきます。

半月板は膝関節を屈曲していくと、接触面積は減少して、接触圧が高い部分は後方に移動
していきます。屈曲90度で接触面積は1/2となり、半月板中後節の圧が高くなります。

特に外側半月板に対する切除術は内側半月板と比較して脛骨大腿関節の接触圧変化に対する影響が大きいとされている。膝関節の所見を注意して進めていきます。

半月板切除後は、関節水腫の有無を確認しながら、回復の進み具合の判断の一つの指標と
していきます。
Exの内容が非荷重→荷重→ランニング・ジャンプなど、
次のPhaseに以降する時も、疼痛だけでなく、関節水腫の状態も
確認していきたいですね。

術後早期に生じるrapidly chondrolysisと呼ばれる軟骨損傷は、過度な早期スポーツ復帰との関連が示唆されていて、リハビリの進め方にも注意が必要ですね。

関節水腫
術後1ヶ月程度で認められなくなりますが、2ヶ月以降も関節水腫が残存している場合は、Exの強度や頻度の再考が必要かもしれません。
特に関節軟骨の損傷を合併している場合は、関節水腫が長期間残存する事が
多いので、注意していきましょう。

Phase1(0〜2週間)

術後早期から荷重制限はなく行う事が多いが、疼痛や水腫の状態を確認していく。

縫合術とは違い、術後は可及的にリハビリを行う事に、制限をする事が少ないです。
しかし、関節水腫や疼痛が持続する場合には、注意が必要です。

初期は非荷重でのエクササイズを中心に実施していき、保存療法と同様に可動域と筋機能の改善を図っていきます。

Phase 項目 荷重・歩行 可動域 エクササイズ

Phase1
(0-2週)

疼痛コントロール
腫脹軽減
創部治癒
可動域拡大
荷重開始
膝関節周囲筋の改善
股関節周囲筋の改善
疼痛の範囲内で
荷重開始
伸展0
屈曲120
可動域ex
ヒールスライド 膝伸展
筋力ex
パテラセッティング
SLR
ハムストリング等尺性収縮
股関節ex(伸展・内転・外転)

Phase2(3〜6週)

炎症が増悪していない事を確認し、術後2〜3週以降から荷重位でのExもを開始していきます。静的なexから動的なExに移行していきますが、早期は深屈曲を控えていきましょう。

荷重位でのトレーニング開始後、膝関節の水腫の増悪がなければ、4週以降にジョギングを始めていきます。仮に水腫が残存している場合は、炎症の軽減を最優先していきます。

Phase 項目 荷重・歩行 可動域 エクササイズ
Phase2
(3-6週)
疼痛コントロール
腫脹軽減
正常可動域
正常歩行
松葉杖オフ 全可動域 可動域ex
ストレッチ 自重・他動
有酸素ex
エアロバイク クロストレーナー
筋力ex
両下肢スクワット(0〜90°)
レッグカール カーフレイズ など
固有感覚ex
バランスボード BOSUなど

Phase3(6〜12週)

ジャンプexはスクワットや片脚exが安定し、
水腫の増悪がな事を条件に6週以降に開始していきます。

Phase 項目 荷重・歩行 可動域 エクササイズ
Phase3
(6-12週)

正常可動域
筋力増強
持久力向上
スポーツ特異性向上
スポーツ復帰

平地歩行
階段昇降
ランニング
全可動域 可動域ex
ストレッチ 自重・他動
有酸素ex
エアロバイク クロストレーナー
筋力トレーニング
片脚トレーニング ランジなど
固有感覚ex
バランスボード BOSUなど
プライオメトリックex
ジャンプ アジリティ

終わりに

今回は、半月板損傷後に、手術にて半月板を切除したあとのリハビリについて、
一般的なプロトコールを参考に、リハビリ・トレーニングについて確認していきました。

病院や医師の指示によって、プロトコールは違いがあると思います。
例えばランニング開始は術後4週、術後6週からなど、文献によって違いがあります。

Exの内容が移行するタイミングでも、焦ってレベルアップ
してしまうとより復帰まで時間がかかってしまいます。

膝関節の状態を、評価していく事は本当に重要ですね。

半月板切除術では、組織が修復されているものではなく、不要な部分を取り除く手術です。
切除術をする事で新たな接触面が生じる事じる為、機能的に順応するまでにある程度時間を
要する事を意識しておきましょう。

今回も最後まで読んで頂いてありがとうございました。
参考になれば嬉しいです。

最後に各Phaseのプロトコールについては下記にひとつにまとめました。

Phase 項目 荷重・歩行 可動域 エクササイズ

Phase1
(0-2週)

疼痛コントロール
腫脹軽減
創部治癒
可動域拡大
荷重開始
膝関節周囲筋の改善
股関節周囲筋の改善
疼痛の範囲内で
荷重開始
伸展0
屈曲120
可動域ex
ヒールスライド 膝伸展
筋力ex
パテラセッティング
SLR
ハムストリング等尺性収縮
股関節ex(伸展・内転・外転
Phase2
(3-6週)
疼痛コントロール
腫脹軽減
正常可動域
正常歩行
松葉杖オフ 全可動域 可動域ex
ストレッチ 自重・他動
有酸素ex
エアロバイク クロストレーナー
筋力ex
両下肢スクワット(0〜90°)
レッグカール カーフレイズ など
固有感覚ex
バランスボード BOSUなど
Phase3
(6-12週)

正常可動域
筋力増強
持久力向上
スポーツ特異性向上
スポーツ復帰

平地歩行
階段昇降
ランニング
全可動域 可動域ex
ストレッチ 自重・他動
有酸素ex
エアロバイク クロストレーナー
筋力トレーニング
片脚トレーニング ランジなど
固有感覚ex
バランスボード BOSUなど
プライオメトリックex
ジャンプ アジリティ

参考文献:
整形・災害外科 第63巻 第5号
理学療法 2011年 1月
理学療法 2020年 2月