Physical Therapy

半月板のバイオメカニクス 半月板シリーズ②

こんにちわ

前回の半月板シリーズ(1)から時間がたってしまいました

今回は半月板の機能やバイオメカニクスについて、まとめていきたいと思います。

半月板の損傷後や切除後は、半月板の機能に対してどのような影響を与えるようでしょうか。

力学特性について

まずは半月板に荷重が加わる際には、ひずみ(strain)が生じます。

膝関節に荷重が加わる、ひずみ(starin)は主に3種類あります。

  • 圧縮(compression)
  • 引張(tension)
  • 剪断(shear)

半月板の力学特性を考慮するには、これらの特徴を把握する事も重要です。

これらの力学特性に対して、半月板の主な機能はどのような働きをしているのでしょうか。

半月板の主な機能

  • 荷重分散
  • 衝撃吸収
  • 膝関節の制動性
  • 大腿骨と脛骨の接合性

これらの機能が半月板の主な機能と考えられています。

荷重分散について

半月板は荷重伝達の6〜7割を担うとされていて、半月板の損傷・切除後は荷重分散機能については、どのような変化があるでしょうか。

半月板の切除の場合

Fukubayashiらは、膝関節に伸展位で1500Nの軸圧を加えた時の接触面積は、切除前に対して半月板切除後は50%以下になり、脛骨関節面の最大接触圧は2倍以上に増加したと報告している。

Fukubayasiら

半月板切除を行うと、接触面積は50〜70%減少し、大きな応力集中が生じる事を報告している。

Ahmedら

半月板の損傷の場合

半月板損傷では、関節最大接触圧への影響は少ないものの、損傷の形態によっては最大接触圧の変化が違う事が報告されている。

水平断裂:損傷では影響は少ないものの、半月板切除後は著明に関節接触圧の増加を認める

縦断裂:内側半月板の損傷について、わずかに接触圧の増加を認める

横断裂:半月板の幅の60%程度であれば影響は少ないが、全幅に損傷を認めると接触圧の増加を認める

部分切除では関節接触圧の増加があり、半月板の荷重分散機能に影響がある事がわかりました。

衝撃吸収について

半月板は膝関節の構成体に対して、膝関節の衝撃を吸収する役割があると考えられています。

切除後は衝撃吸収の機能にはどのような、影響があるのでしょうか?

半月板切除後の衝撃吸収能は正常と比較して、20%低下していたという報告がある。

(Voloshinら)

半月板は高速度での衝撃荷重において、関節軟骨より高い衝撃吸収能を有すると考えられています。

そのため、半月板切除後は、速度の速い衝撃荷重に対して、衝撃吸収の機能が低下している事が考慮してしておく事が重要です。

膝関節制動性について

膝関節における関節安定性を担う主たる静的組織は靭帯組織であるが、半月板も膝関節に対する制動性を有している考えられています。

前十字靭帯の不全膝において、内側半月板切除は膝屈曲位において、前方不安定性を増加させる。

Levyら 1982

外側半月板切除後は前十字不全膝においても前方不安定性に大きな影響を与えないとものとされている。

Levyら 1989

内側半月板は前方不安定性に対して、重要な2次的支持組織であると考えられます。

おわりに

今回は、半月板損傷・切除術が機能特性に対して、どのような影響を与えている可能性があるかをまとめていきました。

半月板損傷自体は、半月板切除術より荷重分散機能という点では、機能が維持できる事がわかりました。

切除後、どのようなストレスが膝関節に影響していくか、考えながらリハビリやトレーニングに生かしていきたい思いました。

参考文献:整形・災害外科 第63巻 第5号